FAPS   Side−Press スピーカースタンド  開発後記 

Side-Press2005  開発後記

長い時間をかけて開発し、販売を開始したSide-Pressスタンドでしたが、発売から1年を待たずして新型を世に出すことになってしまいました。

万全を期し、自信を持っていたSide-Press・・・
毎日のように音を聞き、見ていると、もっと何かができそうではないか・・・
もっと魅力的な音が出せるのではないか・・・
そう思い始めたのは、実は販売開始後、間もないころでした。

一部をHP上で紹介させて頂いているお客様から寄せられた沢山の感想文。
小さな新興ショップが売り出した製品にお送り頂いた多くの方の生のお声。

自分は、オーディオの機器を買って、長文の感想文を書いて送るだろうか・・・
そんなことは、やろうとしたこともないな。それなのに・・・・
皆さんの喜び、期待と責任のようなものがひしひしと感じられました。

もっと上を目指して見よう! そして、やれることはやってみました。

セッティングのチューニング、支柱内部への充填材注入、
支柱共振防止冶具開発、スタンド寸法のチューニング、スパイクベースの検討
塗装材質・膜厚の変更、側面押し座材質の変更、ネジ摺動面への潤滑材塗布・・・

どの方法も音が変化しました。良い方向にも悪い方向にも。
変化量だけが新製品のバロメーターならば文句なしの新製品です。
いろいろやって・・・・比較のためにオリジナルを聞くと・・・
これでいいじゃん・・・・ そう思う日が続きました。

ある日、試聴室で機器のセッティングをしている最中のことでした。
体がスタンドに当たっても倒れたことがなかったスタンドが
SPケーブルを足に引っ掛けた拍子にズシーンっと後ろに倒れたのです。
自重の大きなSPのセッティングで後方への飛び出し量を大きくしていました。
Side-Pressは後方に倒れやすい・・・
これは、きちんと対策しないとまずい。具体的なテーマが確定しました。

転倒防止用のアタッチメントの検討、後部支柱の取り付け位置検討、ベース形状変更等々
様々な寸法比のベースを製作し、支柱を仮付けして評価を行いました。
繰り返しているうちに、無垢材削り出しのベース素材の在庫がなくなってしまいました。

仕方がないので、後部支柱用の中空パイプを使ってベースを作ってみました。
ん??!! 出てくる音が違う・・・これは使えるかも! 
4辺を中空にしたものは、金臭い複数の共振が影響して駄目でした。
何パターンかの組み合わせで「良い」結果が出たのが今回のハイブリッド式でした。

何が良いのか・・・ 比較して初めてわかる差異かもしれませんが・・・・
音が座るのです。腰が座った太い音が出てくるのです。
無垢材と中空材の共振と干渉、これが作用していることがわかりました。
スタンドは軽い方が良い・・・・これも改めて感じさせられました。

初代Side-Pressに比べ、空間表現力は高さ方向の広がりが若干減ってしまいましたが
それに勝るとも言える音場の落ち着き感が得られたのです。
この変化は、世に出す価値がある・・・そう確信できたわけです。

ついでに・・・と言っては申し訳ないのですが
初代で気になっていた部分の手直し・改良を行いました。

音質上の問題から最上部の押し座穴を排除し、スタンド全高を下げました。
他にも前述の試行錯誤で試したことが役にたちました。
新たな可能性として流滴型形状のスピーカーへの適用も視野に入れました。
これは後方への転倒防止策が功を奏しました。(瓢箪から駒?)

鋭角スパイクの採用は、お客様の試験結果も参考に決定しました。
外観が安っぽい! そんなご批判に少しでも応えるため塗装の高品質化を行いました。
カッコが悪い! これは今でも非常に耳の痛いご批判ですが
あくまでも音優先を貫きながらスタンド寸法を変更し、
スタンドの大きさばかりが目に付くことがないようにしてみました。

生まれたばかりの小さなショップですが
サイドプレス方式スタンドの火を消さないように頑張っていきたいと考えています。
これからも皆様のご支援とご忌憚のないご意見をお願いいたします。

2005.3.12 ファミリーアーツピュアサウンド   代表 志賀

初代 Side−Press 開発後記

何度も設計・製作・試聴を行いながら開発を進めてきた新型スピーカースタンド
その製品版初期ロットが出来あがりました。

自分で設計しておいて言うのもなんですか、驚くほど素晴らしい音が飛び出してきました。
聴いた瞬間に「ウソだろう! この音!!」と叫んだほど驚きました。
慌てて製作を依頼したT工業所のT氏に電話してしまいました。
「 凄いよ! 想像以上だ! ありがとう!! 」 
返ってきた答えは、「そうだろう! ビックリするよね」

優秀なスタンドとして評判の良いブリロン用スタンドの製作元でもあったT氏も・・
信じられない・・・とその優秀さ認めていました。
しかし、彼は、私にもこの喜びを実際に体感してもらいたい!
そう思ってT氏は、自分の感想を隠していたのです。

ブリロンの従来スタンドと比較しながらテスト・・・と思っていましたが、
交換して一聴しただけでもはや比較の必要はない! 
そう断言できるほどの素晴らしい音が目の前に溢れていました。

カサンドラ・ウイルソン・・・
地を這うように低い彼女の声が一段と凄みを増し、バックは冴え渡っています。
ギターの爪弾きの何とリアルなこと、身震いがします。

ショルティの振るプロコフィエフのロミオとジュリエット・・・
目の前の空間に凄まじく切れの良いオーケストラサウンドが広がっています。
オケの各パートが見えるようです。素晴らしい定位感です。

大好きなメリー・アメリンクのソプラノ・・・
驚きました。等身大の彼女が目の前に立っています。
息遣いの空気の流れすら感じ取れます。

とにかく情報量の差が圧倒的なのです。
聞こえなかった音が聞こえます。
聞き古したCDからドキドキするような音が出てきます。
しかも音が飛んで来ます。
ブリロンが本性を現した! 
このスピーカの持つ能力を全て発揮させられる!
そんなスタンドが出来たことを実感しました。

スタンドでこんなに差が出る! 
こんな強烈な形で感じたのは初めてでした。
様々な機器を交換し、その都度味わってきた変化の醍醐味。
その中でも最上級の喜びがもたらせられました。
音の次元が変わるのです。

新製品は、ブリロンクラスの超小型スピーカーから
小型のブックシェルタイプを想定した汎用スタンドにしました。
サイズ的にはブリロン専用スタンドより二周り大きく、重く、背も高くしました。
最も悩み、苦労したのがスピーカーの固定方法でした。
汎用という言葉の重さ、困難さを痛感する日々が続きました。

従来品は、3本のスパイク+ボルト接合という実質4点支持。
SP側にスパイクの傷跡が残ってしまうという問題を抱えていました。
3本足の特性上、不安定で倒れやすいという問題もありました。

ユーザが大切にしているスピーカーを傷物にする製品は、絶対に認められない。
そういう製品は作りたくない。
製作者であるT氏の声が大きくのしかかります。
スピーカー側に一切の加工を行わずに固定する。
しかも汎用にする。難題でした。

接着方式や、ベルトによる固定方式等が生まれボツになっていきました。
試行錯誤を経て、たどり着いたのが側面圧迫による固定方式。
ボルトの締め付け圧力と支柱の反りに対する反力を圧迫力として利用しました。

スパイクも接合ボルトも不要となりスピーカーに傷をつけることもなくなりました。
3本足+矩形ベースとすることで、倒れにくい物理的な安定度も遥かに向上させました。
試作と試聴を重ね、特許申請も済み、やっと発売にこぎ着けることができました。

これで誰にでも自信を持って安心して勧められるものができた! そう感じております。

ブリロンのユーザは勿論のこと、
すべての小型スピーカーのユーザーの皆様にも是非使っていただきたいと考えております。
ぜひ、この素晴らしい音を自分のものになさってください。

ありがとうございました。

Family Arts Pure Sound  代表 志賀