FAPS   Side-Press お客様レポート

 北海道にお住まいのY様   使用スピーカー : B&W CDM1SE
広く深い音場で評判のサイドプレスを試してみたいとご試聴された北海道にお住まいのY様から頂いた試聴レポート及びメールの一部をご紹介いたします。 

Y様は、現在B&WのCDM1SEをお使いですが、同じB&W社の805Sへ入れ替える予定があるとのことで、まず環境を整えようと考えて様々な機器の見直しを進めておられました。
サイドプレスも結果が良ければ買い取りも考慮されるとのことでご試聴され、最終的にご購入くださいました。

 Y様から最初に頂いた試聴の感想です。
1.現状及び目論み

スピーカー(SP)はB&WのCDM1SEですが、スタンドを所有していないため左SPはスーパーウーファ天板上に御影石の板を敷き、さらにその上に御影石のブロックで持ち上げています。右SPは窓際の作りつけの棚(25mm厚の合板、表面メラミン樹脂)に左と同じ御影石を使ってセッティングしています。

床からの高さは今回のサイドプレスと同じ70cm、背面の壁までは1m、右側SPと側壁である窓際との距離は40cmです。
このように、現状のSPセッティングが理想的な状態ではなく、サイドプレスの試聴はこの現状セッティングとの相対比較になることをお断りしておきます。

SPは居間(30畳)に置いています。天井高は2.5mです。床は全面カーペットですが、空間ボリュームと硬い壁面とに相殺されて極端にデッドな部屋にはなっていません。

これまでメインSPはJBL4312B MKU(スーパートゥイータとしてパイオニアのリボントゥイータを追加している)でしたが、最近はセカンドSPであるCDM1SEでクラシックを聴くことが多くなりました。このため今後の目論みとして、メインのSPをB&W 805Sのような空間表現の得意な小型SPへ変更し、良質のスタンドにセッティングして前後左右へ広がる豊かで自然な音場で聴きたいと考えています。これに伴い、アンプのグレードアップ、CDPのクロック改造等も併せて行う予定ですが、今回のサイドプレス試聴はこの目論みの一環です。

2.サイドプレスのセッティング

これまで、右SPが窓際から40cmくらいしか離れていなかったので、サイドプレスを使って窓際から1m以上離れたセッティングへ変更しました。
背面との距離も1m以上とりました。カーペット上に20mm厚の合板を敷き、その上にサイドプレスをスパイクを使って固定しました。
この状態で、左右SPの間隔は2.5m、SPからリスニングポジションまでの距離は3.5mくらいです。

FAPS スピーカースタンド

(写真について)
現在、今後の機器入れ替えに伴う影響について様子を見るため、バイアンプをシングルにしてみたり、CPプレーヤとパワーアンプを直結したりと、
色々とつなぎ変えて実験している最中であるため、オーディオ機材がグチャグチャになっているためお恥ずかしいのですが、一応添付します。

3.試聴結果

以下に試聴結果をまとめます。
試聴に用いたCDは、テレマン/TafelMusik(Brilliant classics 92177)、J.S.バッハ/オルガン曲集(documents 223498)、ケルティックウーマン(EMI 60233-22)、その他60年代初頭のブルーノート数枚です。

・ サイドプレスのフレームは明らかに振動している。あまりしっかりした床ではないが、振動は床まで伝わっていない。スパイクを刺した合板がわずかに振動するのみ。

・ 「音の響きや余韻が以前とは全く違う」とオーディオに無頓着な奥さんもビックリ。私も同じ第一印象。定位は悪くなっていないのにもかかわらず、楽器の背景の音が3次元空間的にSPの周囲に広がる感じ。サイドプレスのフレームは振動しているものの、その付帯音が聞こえているという印象はない。

・ 音の空間が広がるため、結果としてSPが消える方向の音になる。

・ CDM1SEは、もともと、聞きやすく鳴らしやすいSPではあるが、以前の音とサイドプレスでの音と比較すると、これまで鳴らなかったSPがサイドプレスに乗せることにより急に歌い出したという印象が強い。低域から高域まで全域で活き活きと良く鳴るようになった。奥さん曰く「今までの音は何かに縛られていたような感じ。サイドプレスに乗せると今まで抑え込まれていたものが一気に解放されたような音になる。」とのこと。ハイハイ、貴方の感受性はすばらしいデス。

・ 高域のエネルギー感は若干上昇。そのためか弦に少しの艶が乗るようになり、チェンバロの音が心持ち前にでるようになった。

・ 全体としては若干腰高になる感はあるが、逆にSPのローエンドまで伸びるようになって、帯域自体は広がったように感じる。

・ 私の好みから言えばサイドプレスを選択したことは大正解。空間表現の得意なスタンドとしてネガな面はほとんどない。気に入らない部分については、スタンドが原因ではなく、他の使用機材の問題が多そうだ。機材がエントリーレベルのものである故の限界も見えた気がする。奥行き方向の表現が期待したほどではなかったとか、ボーカル等でやや高域の粗さがやや目立って聞こえるのはアンプやSPの特性によるものだろう。

総じて、タイトで締めつける傾向の音とは真逆で、クラシック等を空間的な広がりを持って余韻たっぷりに楽しく聴かせる方向。ジャズも悪くなく、音楽全体の雰囲気がでて各楽器がよく歌う感じ。かといって音像がボケるようなことは一切無い。SPの支持方法一つでこんなに音が変化するとは驚きだが、オーディオって結構奥深いものだなあと改めてしみじみ。

ただ奥行き表現等に関しては現状SPの限界を感じる。805Sのように空間表現が得意で生真面目な鳴り方をするSPとサイドプレスを組み合わせると、まじめさはそのままで音楽の楽しさが加味されて私好みの音が出てきそうな予感。奥行きの表現を追求するならば、それと同時に送り出し側のCDPやアンプの見直しも必要になると感じた。

 Y様から頂いた試聴レポートに対するFAPSの感想
非常に中身の濃いレポートありがとうございました。Y様も奥様も良い耳と素晴らしい感性をお持ちの方と感じました。

レポート内容ですが、Side-Pressの特徴がほぼ現われた感じに見受けられますね。
恐らく今までよりも長時間音楽が楽しめる方向に変化したのではないかと想像します。

奥行き表現に不満を感じているとのことですが、805系のスピーカーにすることにより改善されますが、意外とアンプの影響も大きいようです。

奥行きの深さはアンプによっても相当に異なります。
私は、長い間、国産のサンスイのアンプを使ってきましたが、現在のアンプ(エレクトロコンパニエのECI−1)にした途端に奥行きが深くなって驚いたことがあります。

セッティングについては、SP間隔に対するリスニングポイントが遠いように感じました。
正三角形の頂点の位置で聞くのを基本として前後に移動して最適ポイントを探してはいかがでしょうか。
もう少しスピーカーを手前に持ってきて少し内振りにすると奥行き表現が変わるかも知れません。

スタンド選定については、どのような音を好むかで選ぶものが変わってくると考えます。
高い解像度と色付けのない音を求めるのなら鳴きの少ない金属系。中音域の豊かな響きの音なら木質系という感じですが、響きが鳴りと気付いたら使う気がしなくなります。

立派で大きく重いスタンドほどスタンドの鳴りの影響が大きく出ます。
それをボードやインシュ、スタンド支柱への充填物等でチューニングするのが一般的ですが、私はスタンドの音を誤魔化すための無駄な努力に他ならないと思っております。

Side-Pressは、スタンド自体を振動させてスピーカーの振動を吸収してしまう訳ですが、その振動を可能な限り小さい音に抑える為にあえて薄肉のパイプ状の支柱を採用しています。
更にスタンド全体を溶接で強固に一体化することによりスタンド接合部分での異音発生を防止しています。
こうしたアプローチで初めて色付けのない自然な音が出ていると思っております。

 Y様から頂いた2度目の感想より
志賀様にお教えいただいたセッティングにて試聴してみました。
スピーカーは5度程度内振り、スピーカー間隔はそのままでリスニングポジションを前方に移動しました。
結果、CDに収められている音やエコー成分を直接聞く感じになりました。
以前のポジションでは壁面からの反射音の影響が多かったのがわかります。

また、面白かったのは、スピーカーに近づくわけですから当然うるさくなるものと思ったのですが、全く逆でした。
トゥイータの指向性の影響だと思いますが、高域の嫌な音や暴れが少なくなって聞きやすい音になりました。

ボリュームは11時だったのが12時に上げても全然うるさくありません。
CDの音そのものが目の前に現れ、定位がより明確になり奥行きも以前より感じられるようになりました。
おそらく、この状態では、アンプやCDP、スピーカーの差がより明確に聞き取れるのでしょうね。


 機材グレードアップ及びセッティングに関するFAPSからのアドバイスの一部です。
セッティングについては、あまり神経質にならなくても大丈夫ですが、スピーカを簡単に移動できますのでいろいろ試してみてください。
下部の自重受け座の高さを変えれば傾きが調整できますので少し上向きにすると聞きやすくなることもあります。

私の、B&W N805セッティングが、左右間隔(スピーカー中心間)1.8m、リスニングポジションまで1.5mとかなり近接して聞いていますが、あまり音量を上げなくても演奏の中に埋没できるような感じになってきます。このようなセッティングは、深夜に音楽を楽しむ場合に最適です。

余談ですが、サイドプレスを購入された方の奥様からキッチンで聞く音も良くなったとお褒めをいただくことがあります。
Y様の奥様はどうのように感じいらっしゃるのでしょうか。ちょっと興味がございます。

これも余談ですが、実は私自身がクラシックのフルート奏者でもあり、オーケストラでも演奏しておりました。そんな関係でジャズも聞きますが、圧倒的にクラシックが多いです。
この手のスピーカーで大編成のオーケストラを聞く場合の最大の問題は、やはり本物の低音が出ていないことです。

クラシックを聞く場合は、良質のサブウーハーの効果は非常に素晴らしい効果を出してくれます。
単に重低音が出ると言うことではなく、演奏の空気感ががらっと異なるのです。重低音と無関係のフルートソロの演奏でもその違いが出てきます。
こういう方向性も含めた機材のグレードアップも考えられてはいかがでしょうか。
 Y様のご返事より
色々とアドバイスいただきありがとうございます。
私自身、キッチンに立つゴキブリ亭主ですので、キッチンからの音の変化も確認しておりますが、概ねリスニングポジションでのレポートと同じ感じで、良い方向に変わったと感じております。
低域の必要性はよくわかります。一説によると、人間は無意識のうちに、壁からの反射音同士が重なるときに生じるうなりのようなものを感じることができるらしいです。
したがって、音域が低い方まで伸びていない楽器の演奏でも、間接音も含めた総合的な雰囲気を感じ取ることができるのだそうです。

スタジオや無響室のように響きの少ない部屋での録音ならばともかく、ホール等で録音する場合にはそういうことが起こるようです。
私もそこまで意識して聞いたことはありませんが、ヤマハの安物サブウーハーがあるので、今度、実験してみます。

仕事で何度かヨーロッパに行く機会がありましたが、大きな町の大聖堂は外観もすごいのですが、中に入るともの響きがすばらしく、キリスト教徒でなくとも妙に敬虔な気持ちになります。
このような環境で育った音楽は、屋内の響きを前提として成り立っているでしょうから、そのような意味でも壁から反射する低音の影響は音楽の構成要素の一つなのかもしれません。

クラシックの屋外コンサートなどは、気軽な雰囲気で聞けるのは良いのかもしれませんが、音自体はかなり厳しいのではないでしょうか。

実は私も子供のときからピアノをやっており(下手ですが)、高校から大学まではジャズをメインにアマチュアとして活動をしておりましたが、
今では、すっかり聴く側に回ってしまいました。歳のせいか、昔は好きだった大編成のオーケストラによる交響曲より、最近ではバッハ以前の時代の小規模な管弦楽やオルガン、声楽に魅かれています。

そのような背景もあり、楽器の音そのものだけでなく、空間的な響きがもっとだせるような機器への買い替えを進めているところです。